忘れ物の行方

16歳年下の彼に渡したかったお酒と手紙を、忘れ物としてあるレストランに届けた。

 

忘れ物として防災センターに届くことは下調べしてあったので、あとはお店の人が正しくセンターに届けてくれること。

そして彼がそれを取りに行ってくれること。

この2つの動きが必要だった。

 

お昼に、プレゼント受け取りましたとメッセージが来た。

 

『プレゼント受けとりました。

お手紙も読みました。

僕もあなたから多くのものをもらいました。

ありがとう。』

 

これは私の手紙に対する返事だ。

私は彼に何を捧げられただろうという疑問符の無い質問に対するお返事だ。

優しいね。

 

『最後は直接面と向かってお別れをいえれば思いは伝わったかと、、、
心残りです』

 

以上。

 

もうこれで充分である。

会ったらまた関係を求めてしまうかもしれないし。

これが一番いい方法だと思うよ。

 

どんなに努力したとしても、泣いても、彼の言葉からはお別れとか、今後は無いという言葉しか出てこないから。

これが彼の頑固さであり、誠実さなんだ。

 

『思いは伝わっています、大丈夫。

大好き。

体と自身の気持ちを大切にして、これからも元気に過ごしてね。』

 

顔文字も入れて、明るく返事をした。 

 

5回しか会っていないから、顔がもう思い出せなくなっている。

優しい目をした人だった。

ホクロが多かった気がする。

体は意外としっかりしてて、確かに野球体型だった。

背はヒールを履いた私より背が高かった。

いつも仕事終わりの会社員の姿だったから、街を歩いていると彼じゃないか?と思う人ばかりだ。

彼と会った場所へ行くとバッタリ会わないかと緊張してしまう。

 

彼の顔を思い出そうとすると涙が出てくる。

もう彼についての涙は枯れたと思ってたのにね。

 

さあ、この彼についてはもう終わりだ。

残った大好きと感謝の気持ちだけは抱きしめておこう。